2007-01-01から1年間の記事一覧

2007年回顧(このブログ編)

やる気なし!? さっそく振り返ってみるとしよう。まずは更新ペースの問題から。以前は時間のあるときに不定期で更新していたこのブログだけれど、今年の二月から金曜日更新ということに決めてみた。この作戦、六月までは順調だった。ちゃんと毎月四回更新で…

2007年回顧(出版編)

今年の出版物を振り返って 今年2007年は、お正月からびっくりさせられてスタートした。元旦の新聞に、長らく絶版だった、あのロレンス・ダレル「アレクサンドリア四重奏」(高松雄一訳、河出書房新社)シリーズが再び出版されるという広告を発見したことだ。…

 エリザベス・テイラー 『エンジェル』

(小谷野敦訳、白水社2007) (最所篤子訳、ランダムハウス講談社2007) 〔Elizabeth Taylor Angel 1957〕 強い情念の世界 僕が思うに、物事にクールで、何事にも執着せず達観して生きていけるような登場人物は、小説にはふさわしくない。主人公が「別にどう…

 ジョージ・オーウェル 『一杯のおいしい紅茶』

(小野寺健編訳、朔北社1995) オーウェルのイギリス人気質 こういうブログでも、あるいは新聞や雑誌とか、どのような機会でもいいのだが、もしあなたがエッセイストだったとして、何でもいいから好きなことを書いてくださいと頼まれたら、どんなことを書く…

 D.H.ロレンス 『恋する女たち』

(福田恒存訳、新潮社 1969)〔D.H. Lawrence Women in Love 1920〕 水泳 近頃、頻繁にプールに泳ぎに行っていて、そのせいもあってこのブログの更新がなかなか進まなかったりするのだが、それはともかく、やっぱり水泳は気持ちがいい。個人的には水を切って…

 D.H.ロレンス 『恋する女たち』

(福田恒存訳、新潮社 1969) 〔D.H. Lawrence Women in Love 1920〕 ジェラルド・クライチの放電 昔に書かれた小説を読んでいると、当時の技術や生活についての自分の無知ぶりに気づかされることが多々ある。たとえばジェイン・オースティンの小説の時代。…

 D.H.ロレンス 『恋する女たち』

(福田恒存訳、新潮社 1969) 〔D.H. Lawrence Women in Love 1920〕 懲りずにまた姉妹の文学 いつの間にか今年の読書テーマのひとつに、勝手になってしまった「姉妹のイギリス文学」シリーズ。これまでにここで取り上げてきたのは、順に、ジョージ・エリオ…

 アントニー・バージェス 『1985年』

(中村保男訳 サンリオ文庫 1984) 〔Anthony Burgess 1985 1978〕 サンリオ文庫 SFや海外文学の古書が好きな人なら、サンリオSF文庫(あるいはサンリオ文庫)は、やはりとても気になる。「すごくメジャーというわけでもないけれど、でもやっぱり興味を満た…

 ジェイン・オースティン 『分別と多感』

〔Jane Austen Sense and Sensibility 1811〕 (中野康司訳 筑摩書房ちくま文庫 2007) 姉妹の文学ふたたび 感情を抑制して、常に分別ある態度を怠らないお姉さんのエリナー。一方の妹マリアンは自分の感情のおもむくまま、言いたいことを言い、したいことを…

 マーガレット・ドラブル 『針の眼』

(伊藤礼訳、新潮社 1988) 〔Margaret Drabble The Needle's Eye 1972〕 ロンドンの北部にあるマズウェル・ヒルという小さな街を、僕は自動車で一度だけ通ったことがある。それは雨の降る暗い夕方で、こういう天気と時間帯ではありがちだけど、道路はかなり…

 ヴァージニア・ウルフ 『ダロウェイ夫人』

(丹治愛訳、集英社文庫 2007) 〔Virginia Woolf Mrs Dalloway 1925〕 冒頭 タイセイは、本は僕が買ってくるよ、と言った。 せっかく『ダロウェイ夫人』の新しい文庫本が出たのだから。以前から単行本としては発売されていたものだし、でもこれが他の『ダロ…

 英詩は読者を獲得するか

阿部公彦『英詩のわかり方』(研究社、2007年3月) 小林章夫『イギリスの詩を読んでみよう』(NHK出版、2007年7月) バッハの楽譜 いつも昔の話ばかりで恐縮してしまうが、中学生や高校生の頃、一人で東京に出てくる機会があるとだいたい銀座に向かった。僕…

 アンガス・ウィルソン 『悪い仲間』

(工藤昭雄・鈴木寧訳、白水社、1968) 〔Angus Wilson The Wrong Set and Other Stories 1949〕 幸運なデビュー アンガス・ウィルソンは戦後イギリスで最も敬意を集めていた作家の一人だった。今回取り上げた彼の処女短編集『悪い仲間』が書かれた経緯は(…

 アントニー・バージェス 『エンダビー氏の内側』

(出淵博訳、早川書房1982) 〔Anthony Burgess Inside Mr. Enderby (1963)〕 ローマ。僕にとってのローマ。昔から古代ローマに興味があり、塩野七生さんの本も愛読したので、あの街に残された遺跡を巡って過去の追憶にひたるべく、また訪れてみたいなという…

 アイリス・マードック 『天使たちの時』

(石田幸太郎訳、筑摩書房1968) 〔Iris Murdoch The Time of the Angels 1966〕 架空の書物 今回取り上げるアイリス・マードックとはあまり関係ないけど、まずはスタニスワフ・レム(1921-2006)の話。彼のSF作品の中にはときどき架空の書物名が出てくるの…

 A.S.バイアット 『ゲーム』

(鈴木建三訳、河出書房新社1977) 〔A.S.Byatt The Game 1967〕 『ミドルマーチ』の存在感 ちょっと前にこのブログで紹介したとおり、僕はジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』を読み終えた。そして続いて、『ミドルマーチ』が作品内で言及されていたヴ…

ジュリアン・バーンズ 『太陽をみつめて』

(加藤光也訳、白水社 1992) 〔Julian Barnes Staring at the Sun 1986〕 ご活躍中の方々 「イギリスの最近の男性作家で…最近って言ってもいろいろあるから…そう、戦後生まれの作家で、おススメは?って、訊かれたら誰かな」 「それって、マニアックな意味…

J.M.クッツェー『夷狄を待ちながら』

(土岐恒二訳、集英社文庫 2003) 〔J.M.Coetzee Waiting for the Barbarians 1980〕 タイトルの翻訳 今回もそうだけど、英語で書かれた小説(とくにイギリス圏のもの)を、僕は日本語で読んでいる。そして読んでみて「これはいい!」と思った本は、できるだ…

 マーガレット・ドラブル『夏の鳥かご』

(井内雄四郎訳、新潮社 1973) 〔Margaret Drabble A Summer Bird-Cage 1963〕 兄弟姉妹 『夏の鳥かご』は、1939年生まれで今年68歳になるマーガレット・ドラブルが24歳のときに出版した彼女の処女作。1963年の発表ということは、現在から四十年以上も前の…

 ヴァージニア・ウルフ 『灯台へ』

(御輿哲也訳、岩波文庫 岩波書店 2004) (伊吹知勢訳、ヴァージニア・ウルフ コレクション みすず書房 1999) (中村佐喜子訳、新潮文庫 新潮社 1955) 〔Virginia Woolf To the Lighthouse 1927〕 宵から夜、夜から朝へ 今回『灯台へ』を読み終えて、「や…

ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』 

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 フルートを吹いた男、タイセイ 小さい頃には習い事に行かされたりする。僕の場合はまず水泳。当時はかなり嫌々だったけど、今になってみると結果的には良かった。…

ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』 

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 語り手エリオット 前回のブログでミドルマーチの第一章の冒頭を紹介した。あの、「ブルック家の長女には、粗末なよそおいのため一段とひきたって見えるといった美…

 ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 きっかけはバーゴンジーから マーガレット・ドラブルの処女作『夏の鳥かご』を読んだのはだいぶ前のことなのに、このブログでなかなか紹介できないでいる。紹介す…

 ロレンス・ダレル 『アレキサンドリア四重奏I ジュスティーヌ』 

(高松雄一訳、河出書房新社 2007) 〔Lawrence Durrell Justine (1957)〕 異端児ダレル 僕が興味を持っている時代、つまり20世紀の半ばから後半にかけてのイギリスのことだけれども、オクスフォードかケンブリッジを卒業しているということの持つ意味は、…

 ヴォネガット語録

ヒューマニスト 彼はユーモア溢れるヒューマニスト。そして何よりも、思いやりのあるやさしい人だ。 「わたしはただ、恐ろしい苦難から抜け出られない人がたくさんいることを知っている。だから、人間が苦しみから抜け出すのはわけないと思っている連中を見…

 グレアム・グリーン 『権力と栄光』 

(斎藤数衛訳、早川書房 ハヤカワepi文庫 2004) 〔Graham Greene The Power and the Glory (1940)〕 舞台 1930年代のメキシコ。このメキシコの中でも東のはずれのほうにある、タバスコ州の田舎町を中心に『権力と栄光』のストーリーは展開する。当時のメ…

 サイモン・アーミテージ編 『ショート&スイート 101の超短編詩』

〔Simon Armitage(ed.) Short and Sweet - 101 Very Short Poems (Faber, 1999)〕 語数を減らして ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』の舞台はイギリスで、登場する人々は普通に耳にするような英語を話す。しかし「偉大な兄弟」が率いる全体主義政…

若島正編 『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス編』

(異色作家短編集19 早川書房2007) 作品の配膳 僕は持っていないのでわからないけど、「iPod」っていうのはきっと、どこかしらからかダウンロードした音楽を貯めこんで、持ち歩いて聴けるようにする機械なのだと思う。そして自分が好きだ、聴きたいと思った…

 富山太佳夫『文化と精読 新しい文学入門』

(名古屋大学出版会2003) 多様な解釈 先日の新聞に、こんな記事が載っていた: 「人生ゲーム」も「脱お金」 米製造元、新版発売へ 日本でも人気の「人生ゲーム」をつくる米ハズブロ社は、紙幣にかわっておもちゃのVISAカードで支払い、大金持ちになるか…

 ジョン・ベイリー 『赤い帽子』 

(高津昌宏訳、南雲堂フェニックス2007) 〔John Bayley The Red Hat 1997〕 フェルメール フェルメールの絵を実際に観たことがあるだろうか。かつてロンドンで行われた「フェルメールとデルフト派展」に行き、僕は初めて彼の作品に遭遇したのだが、そのとき…