2007-01-01から1年間の記事一覧

 B.S.ジョンソン『老人ホーム――一夜のコメディ』

(青木純子訳、東京創元社2000) 〔B.S.Johnson House Mother Normal (1971)〕 耳で聴く文化 かつてまだ中学生の頃、この年頃にはありがちだけれども、僕は部屋にあったラジオを一生懸命聴くようになり、なかでもNHKFMの熱心な愛聴者になった。NHKFMというこ…

 ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』

(栩木伸明訳、国書刊行会「短編小説の快楽」シリーズ、2007) イギリスの夏 イギリスに旅行に行くとしたら、いつの時期に出かけるのがいいだろうか。自分の仕事とか、旅行代金とか、そういう諸事情を一切忘れて、一番訪れてみたい時期を考えてみる。買い物…

 オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

(松村達雄訳、講談社文庫1974) 〔Aldous Huxley Brave New World (1932)〕 アンチ・ユートピア小説 たしか大学二年生の頃のこと。もう十年以上も前の話だ。「英語が勉強できるからいいかも」くらいの、ほとんど気まぐれから英米文学を専攻してしまった僕…

 スタニスワフ・レム 『大失敗』

(久山宏一訳、国書刊行会2007) レムの最終SF作品 今回はイギリス文学から離れて、僕が敬愛してやまないポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの、最近出された新たな翻訳作品について。 『大失敗(フィアスコ)』はレムの最後の長編SFで、本国ポーランドで…

 エリザベス・テイラーについて

復活? 前回、『家族のかたち』というアンソロージーを紹介した中で、エリザベス・テイラー(小説家)について少し書いた。今回はその続き。彼女についてもう少し。 エリザベス・テイラーの場合、名前の後ろに「(小説家)」とか「(作家)」と入れないと、…

『英語圏女性作家の描く 家族のかたち』

(佐藤宏子/川本静子訳、ミネルヴァ書房 MINERVA世界文学選、2006) 現代的視点 この本は今までの日本にはなかった、とても面白い視点のアンソロジーだと思う。面白い視点とは言っても、別に奇をてらったテーマによる編集ではない。20世紀後半の英語で書か…

 イェイツ「サリーガーデンのほとりで」

今回はテレビを観た話。1月28日夜9時から教育テレビで、いつもはよく「N響アワー」をやっている時間なのだが、「思い出の名演奏」と題した番組を放映した。そして、とくにこの夜はイギリスの20世紀を代表する作曲家、ベンジャミン・ブリテンと、彼のパート…

 笑いのちから

■富山太佳夫 『笑う大英帝国――文化としてのユーモア』(岩波書店、岩波新書 2006) ■澤村灌・高儀進編 『イギリス・ユーモア文学傑作選 笑いの遊歩道』(白水社、白水Uブックス 1990) ユーモア精神をお勉強 先日、紀伊国屋書店新宿本店の五階で「笑いのちか…

 ジュリアン・バーンズ『イングランド・イングランド』 

(古草秀子訳、東京創元社2006) 〔Julian Barnes England, England (1998) 〕 ユーモア満載 2006年の年末に発売されたバーンズのユーモア小説は、期待にたがわない、とてもおもしろくて、そして読みがいのある作品だった。イギリス的なユーモアとか、イギ…

これまでの日記

2008年の日記(2007年は下段) 2008-12-27 【2008年回顧】 2008年回顧 「いったい何をしていたのか」 2008-10-03 【リック・ゲコスキー】 「トールキンのガウン」に隠れていたもの 『トールキンのガウン』 2008-09-19 【ジョージ・オーウェル】 『一九八四年…