ヴァージニア・ウルフ 『灯台へ』

(御輿哲也訳、岩波文庫 岩波書店 2004) (伊吹知勢訳、ヴァージニア・ウルフ コレクション みすず書房 1999) (中村佐喜子訳、新潮文庫 新潮社 1955) 〔Virginia Woolf To the Lighthouse 1927〕 宵から夜、夜から朝へ 今回『灯台へ』を読み終えて、「や…

ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』 

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 フルートを吹いた男、タイセイ 小さい頃には習い事に行かされたりする。僕の場合はまず水泳。当時はかなり嫌々だったけど、今になってみると結果的には良かった。…

ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』 

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 語り手エリオット 前回のブログでミドルマーチの第一章の冒頭を紹介した。あの、「ブルック家の長女には、粗末なよそおいのため一段とひきたって見えるといった美…

 ジョージ・エリオット 『ミドルマーチ』

(工藤好美・淀川郁子訳、講談社文芸文庫①〜④ 1998) 〔George Eliot Middlemarch (1872)〕 きっかけはバーゴンジーから マーガレット・ドラブルの処女作『夏の鳥かご』を読んだのはだいぶ前のことなのに、このブログでなかなか紹介できないでいる。紹介す…

 ロレンス・ダレル 『アレキサンドリア四重奏I ジュスティーヌ』 

(高松雄一訳、河出書房新社 2007) 〔Lawrence Durrell Justine (1957)〕 異端児ダレル 僕が興味を持っている時代、つまり20世紀の半ばから後半にかけてのイギリスのことだけれども、オクスフォードかケンブリッジを卒業しているということの持つ意味は、…

 ヴォネガット語録

ヒューマニスト 彼はユーモア溢れるヒューマニスト。そして何よりも、思いやりのあるやさしい人だ。 「わたしはただ、恐ろしい苦難から抜け出られない人がたくさんいることを知っている。だから、人間が苦しみから抜け出すのはわけないと思っている連中を見…

 グレアム・グリーン 『権力と栄光』 

(斎藤数衛訳、早川書房 ハヤカワepi文庫 2004) 〔Graham Greene The Power and the Glory (1940)〕 舞台 1930年代のメキシコ。このメキシコの中でも東のはずれのほうにある、タバスコ州の田舎町を中心に『権力と栄光』のストーリーは展開する。当時のメ…

 サイモン・アーミテージ編 『ショート&スイート 101の超短編詩』

〔Simon Armitage(ed.) Short and Sweet - 101 Very Short Poems (Faber, 1999)〕 語数を減らして ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』の舞台はイギリスで、登場する人々は普通に耳にするような英語を話す。しかし「偉大な兄弟」が率いる全体主義政…

若島正編 『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス編』

(異色作家短編集19 早川書房2007) 作品の配膳 僕は持っていないのでわからないけど、「iPod」っていうのはきっと、どこかしらからかダウンロードした音楽を貯めこんで、持ち歩いて聴けるようにする機械なのだと思う。そして自分が好きだ、聴きたいと思った…

 富山太佳夫『文化と精読 新しい文学入門』

(名古屋大学出版会2003) 多様な解釈 先日の新聞に、こんな記事が載っていた: 「人生ゲーム」も「脱お金」 米製造元、新版発売へ 日本でも人気の「人生ゲーム」をつくる米ハズブロ社は、紙幣にかわっておもちゃのVISAカードで支払い、大金持ちになるか…

 ジョン・ベイリー 『赤い帽子』 

(高津昌宏訳、南雲堂フェニックス2007) 〔John Bayley The Red Hat 1997〕 フェルメール フェルメールの絵を実際に観たことがあるだろうか。かつてロンドンで行われた「フェルメールとデルフト派展」に行き、僕は初めて彼の作品に遭遇したのだが、そのとき…

 B.S.ジョンソン『老人ホーム――一夜のコメディ』

(青木純子訳、東京創元社2000) 〔B.S.Johnson House Mother Normal (1971)〕 耳で聴く文化 かつてまだ中学生の頃、この年頃にはありがちだけれども、僕は部屋にあったラジオを一生懸命聴くようになり、なかでもNHKFMの熱心な愛聴者になった。NHKFMというこ…

 ウィリアム・トレヴァー『聖母の贈り物』

(栩木伸明訳、国書刊行会「短編小説の快楽」シリーズ、2007) イギリスの夏 イギリスに旅行に行くとしたら、いつの時期に出かけるのがいいだろうか。自分の仕事とか、旅行代金とか、そういう諸事情を一切忘れて、一番訪れてみたい時期を考えてみる。買い物…

 オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

(松村達雄訳、講談社文庫1974) 〔Aldous Huxley Brave New World (1932)〕 アンチ・ユートピア小説 たしか大学二年生の頃のこと。もう十年以上も前の話だ。「英語が勉強できるからいいかも」くらいの、ほとんど気まぐれから英米文学を専攻してしまった僕…

 スタニスワフ・レム 『大失敗』

(久山宏一訳、国書刊行会2007) レムの最終SF作品 今回はイギリス文学から離れて、僕が敬愛してやまないポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの、最近出された新たな翻訳作品について。 『大失敗(フィアスコ)』はレムの最後の長編SFで、本国ポーランドで…

 エリザベス・テイラーについて

復活? 前回、『家族のかたち』というアンソロージーを紹介した中で、エリザベス・テイラー(小説家)について少し書いた。今回はその続き。彼女についてもう少し。 エリザベス・テイラーの場合、名前の後ろに「(小説家)」とか「(作家)」と入れないと、…

『英語圏女性作家の描く 家族のかたち』

(佐藤宏子/川本静子訳、ミネルヴァ書房 MINERVA世界文学選、2006) 現代的視点 この本は今までの日本にはなかった、とても面白い視点のアンソロジーだと思う。面白い視点とは言っても、別に奇をてらったテーマによる編集ではない。20世紀後半の英語で書か…

 イェイツ「サリーガーデンのほとりで」

今回はテレビを観た話。1月28日夜9時から教育テレビで、いつもはよく「N響アワー」をやっている時間なのだが、「思い出の名演奏」と題した番組を放映した。そして、とくにこの夜はイギリスの20世紀を代表する作曲家、ベンジャミン・ブリテンと、彼のパート…

 笑いのちから

■富山太佳夫 『笑う大英帝国――文化としてのユーモア』(岩波書店、岩波新書 2006) ■澤村灌・高儀進編 『イギリス・ユーモア文学傑作選 笑いの遊歩道』(白水社、白水Uブックス 1990) ユーモア精神をお勉強 先日、紀伊国屋書店新宿本店の五階で「笑いのちか…

 ジュリアン・バーンズ『イングランド・イングランド』 

(古草秀子訳、東京創元社2006) 〔Julian Barnes England, England (1998) 〕 ユーモア満載 2006年の年末に発売されたバーンズのユーモア小説は、期待にたがわない、とてもおもしろくて、そして読みがいのある作品だった。イギリス的なユーモアとか、イギ…

これまでの日記

2008年の日記(2007年は下段) 2008-12-27 【2008年回顧】 2008年回顧 「いったい何をしていたのか」 2008-10-03 【リック・ゲコスキー】 「トールキンのガウン」に隠れていたもの 『トールキンのガウン』 2008-09-19 【ジョージ・オーウェル】 『一九八四年…